< 買ってはいけない中国株 

 

私は中国株に関し、まるっきりの門外漢です。

しかしながら社会人の一般常識として、中国経済のファンダメンタルを徹底的に疑う者です。

そもそも中国は1980年からスタートした一人っ子政策の影響で、黒孩子(へいはいず)と呼ばれる戸籍外の人口が2億人もいるといわれます。

どれほど経済成長を賞賛され、世界貿易機構(WTO)に参加しようと公称人口13億人、実勢人口15億人超というデタラメな人口統計の国に、企業会計の正確さなど期待する方が無理でしょう。(註1)

一人っ子政策は第一子で生まれた多数の女児を間引きへと追いやり(?)現在30歳以下の男女比は、120対100に達する滅茶苦茶な男性過剰社会といわれます。

現代中国は成人男性の四人に一人が結婚できない社会、そしてニッポンの高齢化社会など学芸会に思える、空前絶後の老人社会が十数年後に訪れる国家なのです。(註2)

 

ですから我が国証券会社の中国株推奨に、私は当初から嫌悪感を抱いておりました。

ネット専業証券に顧客を奪われた旧来の対面営業証券が、仕方なく中国株でカモを引っ掛ける“胡散臭い負け犬イメージ

浅草のデンスケ賭博でパクられた香具師が新宿花園神社に店を移すようなものでしょう。

もちろんマスコミに溢れる「こうして中国株で財産を作った」という自画自賛記事など一切信用しません。

 

突然の私事で恐縮ですが一昨年暮、17歳の娘にアメリカ株を買わせようと考えました。

中国でサーズ禍が大騒ぎになったころの話です。

天の啓示を授かりまして高校2年生の娘の小遣いを総動員させ、株式投資の英才教育を思い立ったものです。

中国の成金は子供たちを通学バスで通わせるとき、感染を怖れだして必ずマイカーを買うだろう、中国人は見栄っ張りだからアッという間に我も我もとマイカーブームが広がると考えたわけです。

これからの世の中は間違いなくガソリンが足りなくなる、世界中で原油の掘削ブームが始まると確信させられました。

こうしたとき、なぜか不思議と原油の先物を買う機転が私には浮かばないのです(笑)

そして探した銘柄が世界一の油田探索と掘削機器メーカーのベーカー・ヒューズ・インク(Baker Hughes Inc)でした。

http://finance.yahoo.com/q/bc?s=BHI&t=2y&l=on&z=m&q=l&c=

今話題の映画「アビエーター」の主人公(ハワード・ヒューズ)がオーナーだった会社です。

 

さっそく娘を証券会社の店頭まで連れて行き、未成年ゆえに私が親権者として立ち会い、本人に自筆、捺印のうえで小遣いを入金させました。

ただし、そのとき当初予算が足りなかったため、外国株発注は一旦見合わせてドル建て預金にしておいたのです。

「お前が将来良い人を見つけて新婚旅行に行くとき、このドルを使いなさい」な〜んて調子です。

さて、年が明けて娘は予定通りのお年玉を回収し、いざ発注しようとした瞬間大変な騒ぎが起きました。

なんと2004年1月の時点でありながら、外国株発注は電話による口頭注文が不可能と営業員に拒絶されてしまったのです。

21世紀の今日、顧客の来店および営業員との対面、そして書面による記帳発注と捺印。

こんな前時代的な売買システムが信じられますか?

パソコンはおろか携帯電話のピコピコで株式を発注できる時代ですよ!

昭和48年12月に制定された日本証券業協会の公正慣習規則が未だに活きていて「電話注文はお断り」というんですから心底ビックリさせられましたよ。

 

電話でいくら怒鳴っても埒があかず、仕方なく娘を連れて数日後に証券会社の店頭まで行って以下の確認書を差し入れました。

 

凸凹証券株式会社 御中                              平成16年▲月△日

海外発行証券投資確認書

                          氏名     宝田  ◎子      捺印

                          住所     東京都 ○△区 ○▼ ****

 

私は、下記の海外発行証券の買付を行うに際し、当該証券についてわが国の証券取引法に基づく発行者に関する開示が行われていないこと及び下記の投資リスクについて営業員の説明を受け、理解致しました。

また、私は自らの情報収集に基づき、私の判断と責任において発注したものであることを確認し、日本証券業協会の規則に基づいて本書を差し入れます。

 

[重要事項]

1.   価格変動リスク

    価格の変動により、投資元本を割り込むことがあります。また為替の変動によっても投資元本を割り込むことがあります。

 

2.   信用リスク

    発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等により投資元本を割り込むことがあります。

銘柄     Baker Hughes Inc

数量     100株 

            邦貨換算 概算買付金額  35万円

 

 

そして店頭で書面による発注をしたところ、今度は支店次長という偉そうなオッサンが出てきて「未成年の外国株売買はお断り」と言うのです。

未成年でも日本株ならOK、ドル建て預金もOK、ただし外国株式はダメ。

「どういう了見か」と、私はカウンター越しにあらゆる知恵と手段を使って説得・懇願したのですが「社内規則ですからダメなものはダメなのです」の一点張り。

これには流石の私も頭に来ました(笑)

挙句の果てに「お父さんの借名仮名口座の疑いがある」と失敬なニュアンスをほのめかすではないですか。

もう腹が立って腹が立って日本橋の日本証券業協会の苦情相談室やら協会の外国株担当者まで文句を言いに行ったほどです。

結論は「2002年に公正慣習規則が緩和されて口頭発注もOKとなったが、各社の自主規制に任せてあるので社内規則がガチンコのところも未だある」という返事でした。

あ〜あ!俺はなんて運が悪い、どうしようもない田舎もんの証券会社を選んでしまった、と嘆いたのですが後の祭り。

こうしてぐんぐん上がるベーカー・ヒューズ・インクの株価を横目に天を仰いで買い注文を諦めたのです。

折からの原油大暴騰を背景に同社株は2月の32ドルが10月には45ドルまで上昇しました。

そして同年七月末、同証券の外国株発注システムも電話注文OKになった、と他店から風の頼りを聞いた次第です。

さてこうした経緯があった翌年、つまり今年の1月の話ですが件の証券会社から娘宛にDMらしき封筒が送られてきました。

残高照合の通知かと思った書類は信じられないことに「中国株のお勧め」「これからは中国株投信の時代です」

娘はまだ18歳の高校3年生ですよ。

「この野郎、俺をゴミ扱いしたな〜!」と私は絶句しました。

外国証券の取引に関する規則(公正慣習規則第4号)

上記の日本証券業協会の取り決めでは預かり資産1000万円以下の顧客をゴミ投資家(小口投資家)と規定し、投資の自己責任判断が出来ない無能力者扱いしているのです。(註3)

 

送られてきた「中国株のお勧め」は前年末に起きた中国、東莞の5万人暴動を一顧だにしない、行け行けドンドンに満ちたものでした。

2004年12月に起きた東莞事件は今回の反日デモと何の関係ない、出稼ぎ労働者の経済闘争です。

http://www.nikkei.co.jp/china/society/20041226dxka026126.html

http://shanghai.tea-nifty.com/laoda/2004/12/post_31.html

 

中国の貧富の格差はもはや内乱前夜を思わせる状況と私は考えます。

共産党幹部と特権資本家に対する怨嗟の声が反日デモのかたちで現れたのでしょうが、ぼちぼちソ連崩壊やルーマニア暴動を思い出しておくべきでしょうね。

中国株でどうのこうの、なーんて時代はとっくに終わっていると私は考えます。

以下の中国の貧富格差の楽観的な評価をご覧ください。

 

 http://www.economicdata.co.jp/china/old0412.htm

 

23日の米紙ワシントン・ポストは、最近の日中関係悪化について「中国にほぼ全責任がある」とする社説を掲げ、胡錦濤政権に外交姿勢の転換を迫った。社説は、「中国は、日本の教科書に関する議論を誇張し、日本の在外公館や飲食店へのデモ隊の攻撃を許した」と指摘。

中国国民の反日感情をあおり、利用するという「危険かつ無責任な決断」と断じたうえで、狙いは共産党一党独裁の延命にあると分析した。さらに、中国による香港民主化勢力の弾圧、毎年2ケタの国防費増額、反国家分裂法制定を挙げ、「これにより、米国などの域外国は中国の味方に付くか敵となるか選択を迫られる」と警告した。(読売新聞- 4月24日)

 

およそ3ヶ月前の2005年1月21日、日経金融新聞で野村資本市場研究所のアナリストが 「ウソで固めた中国株」 の実態を論証しておりました。

 

いつ地獄の釜の蓋が開くのか? ハラハラドキドキの中国株

上場企業とはいえ国有企業である以上、その株の大半は流通しない国有株となっている。

国(正確に言えば国の委託を受けた官僚)が、大株主として多数の議決権を持っており、実質的に株主総会や、取締役、監査役、経営陣の人選をコントロールしている。国有株主がその立場を悪用して、少数株主の権利を合法的、あるいは非合法的に侵害する行為も広く見受けられる。

(中略)

また大株主は上場企業に対する絶対的なコントロール権を利用して、関連取引を通じた会計操作をしている。通常、大株主は傘下に多くの会社を持っており、その操作の下で、自分だけの利益のために、これらの会社の間で関連取引が行われる。

大株主が自社の株価をつり上げ、少数株主の投資を呼び込んでから、ひそかに売却して暴利を獲得するという違法行為が跡を絶たない。

 

以下は我が国に上場された中国株の魑魅魍魎ぶりに悩まされる東京証券取引所代表取締役専務、吉野貞雄氏の模範答弁です。

 

26回 金融審議会 金融分科会 第一部会 より(平成17年3月3日)

池尾委員 

……中国の企業なんかも一番上は国有会社であって、その下に株式会社があるという形態が一般的なわけですね。

……中国企業で親会社は新華社通信か何かだったと思うのです。そういう場合、親会社に関する情報開示の義務づけというときに、実際上どうなるのでしょうか。新華社通信の内容を開示させるということになるのでしょうか。

吉野委員

 ……新華ファイナンスの場合はおっしゃるとおり東証上場が初めての上場ということで、まさに単独上場ということがございまして、親会社が新華社という国営企業であったということで、これをどういう形で適応できるかは、現実問題、非常に難しい問題がございまして、当然、国と国のやりとりになる可能性もあるのですが、どのような開示ができるかということは、私どもは今、規則を制定した後、対応方について具体的なことを詰めているところであると記憶しております。

池尾委員

私はエクイティに関しては親会社が国だから別扱いにできるというロジックは全く理解できないです。子会社の少数株主と親会社の支配株主の間の利益相反の問題は、親会社が国だったら解消されるというふうには全く思っていないので、私の意見はそうだということです。 

http://quote.yahoo.co.jp/q?s=9399.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on

 

以下は我が国の財務省 財務総合政策研究所が発表した全334ページの大力作であります。

一国の財政を論ずる論文でいきなり「制度外資金」という裏金の説明に面食らわされ、次いで信じられない粉飾決算の宝庫というか中国的な大らかさのエッセンスに圧倒させられますよ。

こういう国の“株式会社”を投資家が自己責任で買うならばともかく、証券会社がお客さんによくも奨めるわい、と世の中が信じられなくなります。

 

中国財政・税制の現状と展望
  
PDF:1,080KB)

 財務総合政策研究所客員研究員
   
 大西 靖

2004年12月

04A-26

 

 

 

 

(註1)中国の人口問題

http://www.ier.hit-u.ac.jp/COE/Japanese/discussionpapers/DP98.5/huroku2.htm

http://www.wako.ac.jp/souken/touzai97/touzai9709.html

 

(註2)中国のいびつな男女人口比

http://www.chinavi.jp/koramu151.html

http://news.searchina.ne.jp/2005/0106/national_0106_008.shtml

 

(註3) 日本証券業協会 諸規則より

 

外国証券の取引に関する規則(公正慣習規則第4号)

第19条

協会員は、外国株券等、外国新株予約権証券及び外国債券の邦貨換算約定金額1,000万円未満の取引を行う顧客(機関投資家及び第9条第3項に定める事業会社を除く。以下「小口投資家」という。)との国内店頭取引に当たっては、前条に定めるもののほか、次の各号に規定するものについては十分留意し、より一層取引の公正性に配慮するものとする。

1(略)

2 国内店頭取引の知識の啓蒙

協会員は、小口投資家に対し、外国株券等、外国新株予約権証券及び外国債券の国内店頭取引の知識についてのリーフレット等を店頭に置く等の方法により、外国株券等、外国新株予約権証券及び外国債券の国内店頭取引の知識の啓蒙を図るよう努めるものとする。

 

全文は以下

http://www.jsda.or.jp/html/kisoku/index.html#aa

 

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