< 日本航空 純資産の 激減 >

 

結論

 

JALを支えた初期設定条件が変わる

 

日本航空の2009年3月決算は、新マネー砲談が従来から主張していた「空前絶後のサラ金家計簿」となった。

生計費を親戚・知人の援助に頼るか、パチンコで稼ぐか、サラ金で工面するかの破滅型人生である

日本航空は1953年の創業以来、日本国民の税金を注入されることで存続した粉飾決算会社だ。

ただし、多くの国民は我が子のバカ息子ぶりを認めようとしない。

 

曰く

 

* 日本の誇るナショナル・フラッグ・キャリア

* 鶴丸の栄光の時代を忘れるな!

 

 

これすべて壮大な勘違いといえよう。

サポーターが歌う 「 苦しい今こそ頑張ろう 」

この讃美歌は、過去の好業績が公的助成金で、お化粧された側面に目を塞いでいる。

今日の日本航空の業績悪化の理由として、歴代経営者の無能や従業員の資質の低さに発したものは少ない。

 

21世紀になって業績悪が表面化した原因は、同社を取り巻く会計制度が激変したからである。

会計監査が厳格化され、2006年からは機材関連報奨金 ( 無理訳の英文は  Flight equipment purchase incentives  )という粉飾決算技法が使えなくなってしまった。

例えば1998年の有価証券報告書では恥じる事なく、堂々と利益計上のコメントを付加している

 

日本航空 第47期決算 損益計算書から (1998年:JASと合併前)

機材関連報奨額

機材関連報奨額は、営業外収益の総額の100分の10を超えたために区分表記した。

なお、前期は営業外収益「その他」に3,323百万円含まれている。

 

そもそも、世界中の航空会社で  Flight equipment purchase incentives  と称する会計用語は日本以外に存在しない。

 

粉飾決算の勘定元帳 (単位:億円

暦年

機材関連報奨金

1993

132.69

1994

71.0

1995

278.53

1996

1997

57.25

1998

66.42

1999

191.06

2000

33.06

2001

2002

2003

420.75

2004

292.60

2005

483.86

2006

同年から禁止

2002年以前はJASと合併する前の単独数字

 

日航の歴史とは国策に基づいた粉飾決算、すなわち国家公認の下、赤字を黒字と誤魔化して利益計上し、関係者に高給をばら撒いた幻想の54年間と認識すべきだろう。

補助金漬けの 動く箱モノ 、つまり最初から株式市場に上場させてならない “ 第三セクター ” だったのである。

 

1987年の民営化以降、同社は公的助成に代わる収入源を借入金に求めた。

しかしながら浮世の風は厳しく、まっとうな稼ぎは最初から頼りにできない。

社債および民間銀行からの借入金が限度額に達したころ、SARS(重症急性呼吸器症候群)騒動および9.11 自爆テロが起きた。

なんともラッキーな火事場泥棒のチャンスと、日本政策投資銀行に緊急融資をおねだりする。

 

金融機関からの借入金が限度枠一杯になった2006年からは株式市場で増資を行った。

 

換言すれば、生活費を収入の範囲に収められない道楽息子の破滅的人生である。

 

繰り返される1000億円単位の 「金を引っ張るだけの増資

2009年

2008年

2006年

金主さま

日本政策投資銀行

MSCB

公募増資

調達金額

2000億円

1500億円

1350億円

コメント

ほぼ確定

転換価格は???

)公募?

 

「社長に就任して2日後、第三者割当増資を発表しましたが、株主総会直後ということで、すごく叱られました」

2009年1月6日、日経新聞のインタビュー記事で社長が思わず“第三者割当増資”と間違えた2006年の訳あり公募増資。

 

なるほど公募増資を払い込んだファンド2社は僅か1年余りで売却している。

奇しくもモルガンスタンレー証券は増資発表当日、1億1500万株の空売り用株式取得を関東財務局に届け出た。

 

 

信じ難い勢いで 資産を食い潰した経営者 (単位:百万円)

20093月期

20083月期

20073月期

20063月期

売上高

1,951,158

2,230,416

2,301,915

2,199,385

経常利益

82,177

69,817

20,576

41,608

総資産

1,750,679

2,122,784

2,091,233

2,161,240

資本金

251,000

251,000

174,250

100,000

有利子負債

801,529

915,064

1,021,545

1,229,608

発行済株式総数

3,346,383 (*)

2,732,383

2,682,383

2,045,465

一株当たり利益

25.4

6.2

6.5

23.9

一株当たり純資産

5.4

110.0

113.9

75.0

2,008年月期有価証券報告書(EDINET)より作成

発行済株式(*)はMSCB 61400万株を加えた株数

仮に時価で転換すると35億4800万株に相当する

 

日本航空の資本金と資本準備金の推移(単位:百万円)

2008年3月

2006年8月

2006年7月

2006年6月

2004年4月

資本金残高

251,000

174,250

169,300

100,000

100,000

資本準備金残高

188,253

111,503

106,553

37,253

105,069

資本準備金増減額

76,750

4,950

69,300

67,815

5,069

 

資本準備金を678億円取り崩したJALの第4期連結決算(200541日〜2006331日)で、3度目は繰り返さないと誓ったのだろうか?

同社は過去に2回、合計2,178億円の資本準備金取り崩しを実施している。

3度目の取り崩しは倒産の悪夢がチラついて来るはずだ。

 

日本航空 株主通信Vol.13 2006.5.10

特別損失

テロ事件やSARS、また燃油価格の高騰といった外的要因や、当社グループにおける一連の

安全上のトラブルの影響等により、損失を計上している事業子会社の株式につき減損処理を

行い、1,404億円の特別損失となりました。

その他資本剰余金全額の634億円および資本準備金の一部678億円を取り崩し、損失処理に

充当いたします。

http://www.jal.com/ja/ir/shareholder/tsushin/13/kessan.html

 

新社長登場 人物 兼子 勲氏[日本航空] 日経ビジネス 1998/07/20

社長としての最初の仕事が、自分の給与を35%削ることだった。すでに6期連続の無配。

19983月期の決算では本業や海外ホテル事業などで生じた1500億円に上る累積損失を、

資本準備金などを取り崩して処理するというところまで経営が追い込まれた。

 

そして迎えた2009年決算、自己資本の減少ぶりをギャンギャン叩かれた東芝や日立よりも、遥かに酷い減衰ピッチではないか。

 

後進国のメイドさんじゃあるまいし、バターや塩を帰宅時に台所から持って帰るのか?

 

1株当たり純資産の減少ぶり(単位:円)

会社

2009年3月

2008年3月

2007年3月

日立

315.86

652.95

734.66

東芝

138.25

315.94

344.90

三菱重工

369.94

423.17

425.54

日本通運

454.03

489.26

486.94

日本航空

  5.4

110.0

113.9

 

なにしろ一株当たり純資産は5円台となり、債務超過の宣告が迫ってくる。

 

東京証券取引所の 上場廃止基準(一部・二部)平成19111日現在

債務超過

債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態

でなくならなかったとき(原則として連結貸借対照表による)

虚偽記載

又は

不適正意見等

有価証券報告書等に「虚偽記載」を行った場合で、その影響が重大であると

当取引所が認めたとき

監査報告書等において「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨等が記載

され、その影響が重大であると当取引所が認めたとき

http://www.tse.or.jp/rules/listing/stdelisting.html

 

2003年3月期 長期借入金

借入先

金額(億円)

担保

返済期限

日本政策投資銀行

1,540

なし

平成24.11

みずほコーポ銀行

  253

なし

平成24.11

東京三菱銀行

  247

なし

平成25.02

UFJ銀行

  235

なし

平成25.02

信金中央金庫

  109

なし

平成27.11

その他

  890

なし

平成27.11

3,275

 

 

 

2006年3月期 長期借入金

借入先

金額(億円)

担保

返済期限

日本政策投資銀行

3,372

関係会社株式

平成32.11まで

三菱東京UFJ銀行

  596

なし

平成27.12まで

みずほコーポ銀行

  422

なし

平成27.12まで

三井住友銀行

  290

なし

平成32.07まで

その他

1,437

なし

平成32.07まで

6,118

 

 

 

第022回国会 予算委員会第四分科会 1955年6月2日

運輸省政務次官  河野 金昇君

御承知のように、日本航空株式会社が現在運営している国際線は、北米、香港の二線でありますが、

これが、経営内容を見ますると、操縦士は外国人をもって満たしている関係上人件費が相当膨張し、

また航空機の購入も全額借入資金をもってまかなっている等、国が何らかの助成案を講じない限り、

各国との競争に立ち遅れ、これによる外貨の増収も望めず、ひいては日本航空界の将来に暗影を

投ずる結果となるのでございまして、ここに前述の補助金を交付いたしまして本事業の建全なる発展

を図るためであります。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/022/0526/02206030526001a.html

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B3%E9%87%8E%E9%87%91%E6%98%87

 

 

ところで我が国の住宅ローンの「 ゆとり返済システム 」 は1998年に融資実行された分が2008年前後から割増返済期に移行し、今年から返済困難者が激増と予想される。

 

ゆとり償還残高 8兆3101億円 ⇒ リスク管理債権残高 ⇒ 1兆4753億円 ⇒ 破綻率 17.76%

 

サラリーマンのオヤジどもの5人に1人が住宅ローン破綻する時代になるかも知らん。

次世代の日本社会において、親掛かりの華麗な海外新婚旅行という “ 高度成長経済の初期設定セレモニー ” は消えていくだろう。

 

今、日航に突き付けられた決断は、超高級化路線からの撤退。

いずれ到来する公的資金注入時代に、東京 ⇔ ニューヨークの運賃で158万円のスィート料金を提示していたら、納税者は激昂する。

 

2008年、JALは動きます。

ひとつ上の品質へ。

品質で飛ぶ。

 

一生に一度たりとも海外旅行に縁のなくなる “ 負け組 ” が、これから支払う所得税で、年俸3,500万円のパイロットを養ってくれるか?

株主責任はトコトン追及され、 “ りそな銀行方式の株式買上げ ” は困難になるだろう。

 

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