< JALの 史上最高値は 2010円 >

 

 

 

当初は500円額面株式として発行され、売買単位は100株だったが1990年8月に50円額面に変更され、以後の売買単位は1000株となった。

バブル経済時代の1987年に最高値20,100円(50円額面に換算して2010円)を付け、今日までジリ貧を辿る。

バブル経済の相場環境であろうと単位株が150〜200万円という金額は安くない。

JALは資産家が買う毛並みの良い優良株、という伝説が生まれるのに充分な価格だった。

50円額面に換算して2010円という高値は現在価格の約20倍である。

 

20年前に大蔵省が保有するJALを売り出した価格は13,400円。

 

後日に1対10の株式分割があり、実質的には1340円。

別口で公募増資を行った委細は以下の通り。

いずれも価格は1/10でカウントする。

 

 

バブル期の資本金推移 ( 単位:千円 )

年月日

増資額

増資後資本金

事項

1985.7.30

1,634,474

69,623,387

転換社債の株式転換

1988.9.2

50,330,000

119,953,387

公募700万株 発行価格14,379円

1989.12.14

68,328,000

188,281,387

公募800万株発行価格17,081円

1990.3.31

6,477

188,287,864

転換社債の株式転換

(1987.12.14新聞各紙)

 

先代から相続した個人投資家たちは、気絶しそうな高値で買ったオヤジを罵る無礼は慎んだらしい。

仕方なく保有し続けるうちに株主優待券が送られて来た。

昔は100万円ださないと買えない “ 優良株 ” の株主だったんだよ、うちのお爺ちゃんは。

こうして株主によるコーポレート・ガバナンスは骨抜きにされたのである。

 

2009年12月5日 読売新聞

政府が、公的管理下で再建中の日本航空に対する金融機関の融資に、最大

7000億円の政府保証をつける措置を2009年度第2次補正予算案に

盛り込む方向で調整に入ったことが、5日わかった。

国土交通省は11月24日、運航継続に必要な資金繰り支援を求める日航に

対し、「利用者の利便や企業活動に重大な影響を与えるおそれがある」と認定。

今後、金融機関による追加の資金支援が必要になる可能性もあるため、政府は

つなぎ融資を上回る7000億円の政府保証枠を設けることにした。

 

 

 

 

日本航空 直近3期間のバランスシートから

決算期

2009年3月期

2008年3月期

2007年3月期

売上高

1兆9,511億円

2兆2,304億円

2兆3,019億万円

営業利益

‐509億円

900億円

229億円

当期利益

‐632億円

169億円

‐162億円

総資産

1兆7,507億円

2兆1,223億円

2兆912億円

自己資本

1,746億円

4,539億円

3,110億円

有利子負債

8,015億円

9,150億円

1兆215億円

 

上記の事業概況を見た外国人投資家は仰天するだろう。

自己資本2000億円足らずの会社に日本政府は7000億円の債務保証をするのか?

此の国は噂に聞いた 「 花さか爺さん 」 そのものだった。

 

枯れ木に花を咲かせましょう ♪

 

 

日本航空は1953年に特殊法人として設立された。

 

◎日本航空株式会社法 法律第百五十四号(1953・8・1)

第一条

  日本航空株式会社(以下「会社」という。)は、国際路線及び国内幹線における定期航空

運送業並びにこれに附帯する事業を経営することを目的とする株式会社とする。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01619530801154.htm

 

日本航空の政府出資額推移 ( 単位:百万円 )

 

資本金

政府出資額 ( 後配株 )

出資比率

1953年末

2,000

1,000

50.5

1955年

4,300

3,000

60.6

1957年

7,166

4,000

69.8

1959年

9,387

6,000

63.9

1961年

11,843

6,800

57.4

1963年

14,889

8,300

55.7

 

日本航空()に対する助成 ( 1964年運輸白書から )

本来、国際航空事業は、能率的な交通手段たるのみならず、その国の国際的地位を象徴するものであるが、

その運営には、航空機材の購入等で巨額の資金を要し、経営的にきわめて困難な事業である。

わが国の場合には、さらに戦後の空白期間という特殊な事情もあり、新しく国際航空事業を開始するため

には、格段の措置が必要であつたので、政府は日本航空株式会社法(昭和28年法律第154)に基づく

特殊法人としての日本航空株式会社を設立し、これに対し政府出資(日航法第3)国際線の維持発展の

ための補助金支出(同法第8)債務保証(同法第9)政府所有株式の後配(同法第10)社債発行

限度の特例(同法第5)等の助成を行なう事とした。

(中略)

したがって、日本航空() について、金利負担のない資金すなわち出資が大きな意義をもつものであるが、

なかんづく政府所有株式は、後配株であるので、経営上きわめて有利な資金源であり、民間出資を開拓

するためにも十分な政府出資が望まれる。

http://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/shouwa39/ind100201/003.html

後配株 ⇒ 配当支払いや残余財産の分配などの受取順位が普通株より後回しになる株式のこと。

 近年は劣後株と呼ばれる。

 

第016 回 国会 運輸委員会 第18号 ( 1953.7.17 )

【 粟沢政府委員 運輸省航空局監理部長 】

できれば私どもは官設の養成所というふうなものを設置いたしまして、必要な機器、特に航空機を備えて、

そこで優秀なパイロットその他の技術者を養成しまして、民間航空の発達に寄与したいということを念願

しております。しかし遺憾ながら本年度予算ではこの案が大蔵省に認められません。

五千万円の養成補助だけ今年度認めるということになりまして、それは今回提出の予算に盛り込んで

ございます。

【 楯 兼次郎 委員 日本社会党 】

航空会社に非常に手厚い育成の方策をやっておいて、次に他の産業からこういう夢物語があり、かつ産業

が相当必要な産業であると認めた場合には、同じような方法によって育成をして行かなければならないと

いうような問題が出て参りますので、その点を心配しておるわけであります。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/016/0016/01607170016018a.html

 

今日に騒がれる業績悪化の主たる原因は同社を取り巻く制度的環境が激変したからである。

会計監査が厳格化され、2006年からは機材関連報奨金 ( 無理訳の英文は  Flight equipment purchase incentives  )という粉飾決算技法が使えなくなってしまった。

 

例えば1998年の有価証券報告書では、堂々と粉飾決算の添え書きを付加している

 

日本航空 第47期決算 損益計算書から (1998年:JASと合併前)

機材関連報奨額

機材関連報奨額は、営業外収益の総額の100分の10を超えたために区分表記した。

なお、前期は営業外収益「その他」に3,323百万円含まれている。

 

 

日本航空 2004年度 中間決算の損益計算書から (JASと合併後)

機材関連報奨額

機材関連報奨額 344億円(前年比+188億円)

( 772ER×3, 773ER×2 Q400×1)   http://www.jal.com/ja/ir/management/pdf/setsumei_041108.pdf

上記PDFの20ページを御参照

 

粉飾決算を堂々と告白する経理担当重役が、半年後に社長就任できる上場会社

西松遥

経理担当

重役の発言

日経金融新聞

2005年

12月2日

値引き前の価格の膨らんだ簿価でわざわざ資産を過大計上し

値引き分など利益認識してた。

 

そもそも、世界中の航空会社で  Flight equipment purchase Incentives  と称する会計科目は日本以外に存在しない。

 

粉飾決算の勘定元帳 (単位:億円

暦年

機材関連報奨額

1993

132.69

1994

71.0

1995

278.53

1996

1997

57.25

1998

66.42

1999

191.06

2000

33.06

2001

2002

2003

420.75

2004

292.60

2005

483.86

2006

同年から禁止

2002年以前はJASと合併する前の単独数字

 

機材関連報奨額の呪い 

日本航空は1992年に航空機を買いすぎて機材が余る珍現象が発覚した。

新品を含む4機(800億円)が米国カンザス州の砂漠に放置される状況に陥ったのである。

新機種に買い換える必要もないのに、新品を買わざるを得ない不正経理の一環。

カンザスの田舎は「不思議の国のアリス」で何度も嘲笑されたほどに「何もない、誰も居ない

ところ」

その実態を写真週刊誌フライデー(1993年6月4日号)がスクープした。

原因は機材関連報奨額のリベート以外に考えられない。

必要性がなくても常に買い物を続けないと航空機メーカからのキックバックを計上できない

不正経理にある。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AE%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9

 

日航の歴史とは国家公認の下、赤字を黒字と言い張って利益計上し、世間を欺いてきた虚偽表示の56年間と認識すべきだろう。

すなわち、栄光に満ちた 鶴丸マークの時代 とは、粉飾決算と補助金漬けの公共事業そのものと理解しなければならない。

言うまでもなく論理的・倫理的な観点からは、証券市場に上場させてならない第三セクターだったのである。

 

1987年の民営化以降、同社は公的助成金に代わる収入源を借入金に求めた。

浮世の風は厳しく、まっとうな稼ぎは最初から頼りにできないからだ。

社債および民間銀行からの借入金が限度額に達したころ、ニューヨークの9.11 自爆テロおよびSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動が起きた。

なんともラッキーな火事場泥棒のチャンスと、日本政策投資銀行に3千億円の緊急融資を要請する。

借入金が枠一杯になった2006年からは株式市場で増資を行った。

2006年の増資で手に入れた1,450億円はアッという間に運転資金で使ってしまう。

後は一瀉千里で借金地獄。

 

 

第091回 国会 大蔵委員会 第11号 の要約抜粋 ( 198037日 )

大蔵省主税局長 高橋(元)政府委員

航空機の特別償却の制度の趣旨でございますけれども、航空業について国際競争力上の配慮

いうものが非常に必要でございます。

渡辺貢委員(日本共産党)

40数%も国の出資があるにもかかわらず、税制の面では税収が抑えられ、また企業の収益の面

でも、こうした特別償却制度によって利益が抑えられるというか、隠されるということで、

逆に運賃の引き上げという事態が生じている。

ある方の評論によりますと、「こういう制度は徴税の延期を意味するものであるが、この種の減税

は事実上国家による無利子の金融であり、一種の補助金を意味するものである」こういう

ようなことが指摘をされているわけであります。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/091/0140/09103070140011c.html

 

 

反社会的勢力、いわゆる泥棒さんや暴力団は返すつもりのない借金を「金を引っ張る」と称する。

粉飾決算をルーティーンワークとして会社ごっこを繰り返したJALは、会計制度が代われば倒産して当たり前である。

今更ながら残念な「 盗人に追い銭 」は、一人当たり月間75万円支給と称される年金だ。

粉飾決算を担保として異様な水準まで積み重ねられた退職給付積立金は、納税者として納得がいかない。

“ 再建 ” という語句が図々しいほど、本来は存在し得ない犯罪会社だったのであるから。

 

日本航空だけが突出した比率の 退職給付積立金 (金額:百万円)

銘柄

従業員数(人)

総資産

株主資本(A)

退職給付積立金(B

B/A

NTT

199,113

18,886,195

6,779,526

1,684,741

0.248

日本たばこ

31,476

3,037,378

1,762,511

293,425

0.166

三菱重工

62,212

4,047,122

1,376,289

108,710

0.079

リコー

76,150

2,041,183

960,245

97,020

0.101

全日空

31,905

1,666,843

346,309

107,377

0.310

日本航空

53,010

2,161,240

148,066

139,753

0.944

2006年度各社の有価証券報告書より作成

 

 

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